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木村会計通信 第36号

平成18年7月20日発行

発行:不定期

  
暑中お見舞い申し上げます
 梅雨明けを思わせるような夏日が続き、いよいよエアコンが大活躍する季節になりました。
 来週の7月17日は海の日です。今年は浜降祭が見られるので、楽しい夏になりそうです
 今夏も熱くなるようですので屋内にいても水分補給をしっかりして、熱中症にならない
 ように気をつけたいと思います。皆様におかれましても、どうぞ御身お大切になさって
 下さいますよう、心よりお祈り申し上げます。
 
 それでは、今月も興味深い話題を掲載いたします。

〔1〕 今の時代は「資金調達の多様化」が必要  ~その1~

中小企業の資金調達環境は、昨今は改善しているといわれています。しかし、全体では依然として厳しい状況にあるようです。

資金調達というと、銀行からの借入を連想する人が多いと思います。しかし実は、ここ数年で借入を行う中小企業と貸し出しを行う銀行の関係に大きな変化が現れてきているのです。最初にそうした状況について解説しておきます。

【資金調達を順調に行うには、金融機関への情報開示が重要】

近年の銀行の貸出残高推移を見ると、大企業向け貸出残高に比べて、中小企業向け貸出残高は大きく減少しています。

このほど発表された「中小企業白書」(中小企業庁)では、中小企業を取り巻く金融環境の変化について多くのページを割いていますが、そこでの分析をまとめると、中小企業は資金調達の大半を金融機関からの借入金に頼っているにもかかわらず、次のような問題点があることが分かります。

① 従業員規模が小さい企業ほど、円滑な借入れを行えていない。

② 金利が高く、また保証(人的担保)提供している割合が高いなど、大企業に比べて借入条件が悪い

③ 金融機関に提供している担保の殆どが不動産

④ 中小企業にとっては、地域金融機関が重要な地位を占めている

このようなことの原因としては、貸し手である金融機関が、借り手である中小企業の体質や融資後の経営実態を正確に把握するのが難しいことが挙げられています。つまり金融機関としては、中小企業に融資するかどうかを検討するにあたって、その企業についての情報が足りないために、融資に応じられなかったり、借入れ条件を厳しくせざるを得なかったりするというわけです。そこで、こういう状態を緩和するため。政府の指導で「リレーションシップバンキング機能の強化」(長期的に継続する取引関係からの中から、 金融機関が企業の経営者の資質や事業の将来性などについての情報を得て、それをもとに融資を実行していくこと)が図られることになりました。その結果、金融機関の融資審査において、担保や代表者の保証などの保全面だけでなく、計算書類の信頼性を高めるための取り組み、代表者の経営者としての資質などといった面も、審査項目として重視されるようになってきました。ですから現在、中小企業としては取引している金融機関への適切かつ十分な情報開示(ディクスロージャー)が資金調達を順調に行うための大きなポイントになっているといえます。(続く)

〔2〕 商標登録 境目めぐり攻防

商品やサービスの名称である商標。これを押さえることはビジネスの生命線である。しかし、どこまで商標とみなされるのか。境目が曖昧なゆえに、関係者も落ち着かない。

【地名+普通名詞】

国会に一つの法案が提出された。商標法の一部改正案。博多人形商工業協同組合(福岡市)の佐藤吉信副理事長は、「ようやく産地の念願が叶う」と可決を心待ちにしていた。
ポイントは地域ブランドの保護。博多人形を例にとると、この言葉は地名の「博多」と普通名詞の「人形」から成る。「博多」も「人形」も一般的に使われる名詞であり、いずれも商標として登録できない。では、この二つを組み合わせた「博多人形」はどうなのか。

「近江牛」をはじめ、特産品には「地名+商品・サービス名」が多い。しかし、現在は出所を表示する機能を果たさないなどの理由で、商標登録を原則認めない。博多人形も申請したことはあるが、1963年に拒絶された。

そこで、博多人形の組合が選んだのは、図形との組み合わせによる商標登録。商標は文字(言葉)だけではなく、図形などと結合したものも対象にしている。ただ、別の団体が博多人形という言葉に登録したものとは異なる図案をつけても阻止できない。組合は「文字登録が認められれば、もっと効果があるのに」と悔しい思いをしてきた。法律が改正されれば来年4月から地域ブランドの文字登録が認められやすくなる。

特産品と商標の関係を複雑にするのは例外の存在にある。「西陣織」「三輪素麺」など数十の商標が文字登録されている。「宇都宮餃子」「富士宮焼きそば」など、町おこしに由来するものもある。長年の使用で知名度が上がり、個人・団体など出所が特定できるのが基本条件なのである。

例外の一つ「夕張メロン」は最初、図形で1977年に登録。93年、3度目の出願で文字だけの登録も認められた。博多人形との違いは挑戦した回数なのか――。「同一基準で審査している」(特許庁)はずだが、ある関係者は「準備書類の豊富さや審査官により差がある」とみる。消費者には境目が見極めにくい。

今回の法改正は、地域経済の活性化を目指している。全国的な知名度はないが、地域ではよく知られたブランドに大きな機械が与えられるとの見通しをたてている。そこで熱い視線を送っているのが、兵庫県豊岡市の「豊岡鞄」である。

かつてビニール製として全国シェア8割を誇ったが、海外からの低価格品流入で打撃を受けた。PR更正で巻き返そうというところにこの話が届いた。「産地を打ち出す好機」と兵庫県鞄工業組合(豊岡市)の高茂広理事長は力を込める。

しかし、改正法の運用には不透明な面がある。商標権を持つのは、加入の自由がある事業協同組合などの団体だが、複数の団体から同じ名称の登録希望が出てくることも考えられる。日本弁理士会の本宮照久・商標委員会委員長は「時に争いの種になるかもしれない」と話す。

団体に所属しない作り手が排除される事態も想定される。「幅広い議論が必要」(弁理士会の水野勝文氏)であり、関係者は気が抜けない。

【登録外れる場合】

たとえ登録が認められてもうかうかはできない。業績の急降下から株価下落を招いた2003年春の「ソニーショック」。先立つ02年6月、商標の世界で「ソニーショック」が広がった。携帯オーディオプレーヤー「ウォークマン」へのオーストリア最高裁の判決である。

他社製品を「ウォークマン」と表示した業者を相手取って使用差し止めを求めた裁判で最高裁は訴えを退けた。理由は「既に一般的な名前になっている」。ドイツ語圏で影響力の大きい辞書が、特定商品の名称としながらも、ソニーの名前を挙げず、ソニー側も訂正を求めなかったことも決め手になったのである。商標が普通名詞になれば、名前を使う独占的な権利は失われる。どの国でも同じである。ソニーは代理人を通じて各国の辞書を調査するなど、対策を講じざるを得なかった。

「この言葉はわが社の登録商標。是正をお願いします。」年頭にある国の大使館のホームページを見て、味の素はこのような申し入れをした。その国に持ち込めない商品として、同社の商品名「ほんだし」が普通名詞のように使われていたのである。2000年には「味の素」という言葉の使い方が、普通名詞と紛らわしかったインド政府の輸入統計に訂正を求めている。

同社の所有する商標は約2600。担当者は主要国の新聞、テレビ、辞書のほか、ネットでの使用状況を点検する。特に政府刊行物や辞書に気を使い、商標が普通名詞化しないよう目を光らせる。

発売40周年を迎えた「万歩計」は、山佐時計計器(東京・目黒)の登録商標である。同社は名刺や看板も使って自社製品であると訴えている。「価格や機能で他の歩数計との差を出すのは難しい。名前を強調することが、わが社には重要」(加藤東起男常務)

セロハンは元々、米デュポンの商標だったが、今は普通名詞になった。「うどんすき」という言葉を巡る商標裁判は、最高裁まで争われた結果、普通名詞と判断された。

商標の起源は古代ローマにさかのぼり、日本では701年の大宝律令で、刀剣の生産者名を刻印するよう義務付けた事例があるという。昔から取引の基本だった商標。その線引きは古くて新しい問題である。

〔3〕 ローン残高 減らす手法は?

                            ~繰り上げ返済と借り換えがかぎ~

ある夫婦がマンションを購入しました。その際に住宅ローンを組み、そのまま返済を続けています。しかしローン残高がなかなか減らず不満です。どうにかならないかと、フィナンシャルプランナーに(FP)に聞きました。

夫 ローン残高はまだ四分の一も減っていません。

妻 これからは子ども達の学費もかかる一方だし・・・返済負担で家計がつらいわ。

FP 借りた当時の高い金利水準のまま返済を続けているからですよ。住宅ローンは組んだままにしておくのではなく、金利情勢に応じて見直すことが利息負担を軽減する為に不可欠です。

まず考えるべきは別のローンを改めて組み、そのお金で残っているローンを一括返済する「借り換え」です。金利が低下した後に借り換えれば当然、利息負担は軽くなります。後述の「繰り上げ返済」と違い、手元に余裕資金がなくても可能です。

住宅金融公庫などの公的機関は借り換え先には使えないので、公的ローンから民間ローンへ・・・あるいは民間から民間へというパターンになります。1990年代前半までに同公庫などから4-5%代で借りた人の多くは90年代後半以降、銀行などに借り換えました。

夫 そういえば当時、職場でも話題になっていましたよ。

妻 うちもそうしておけばよかったわね。

FP まだ手遅れではありませんよ。2000年に公庫から2千万円を期間35年で借り(当初2.8%、11年目以降4%)、5年経った今年、どのように対応するか・・・3つのケースを想定し試算しました。

まず、公庫ローンをそのまま返済し続けた場合(a)、残りの30年間で支払う予定の利息総額は1158万円です。

金利が当初2.55%、11年目以降3.05%と公庫よりも低い民間ローンに借り換えたケースです。そのうち、公庫ローンの残り期間と同じ30年で借りた場合(b)では、毎月返済額(当初)が公庫より2000円強少なくて済み、利息総額は859万円です。

または、bと同条件で毎月返済額をあえて減らさないよう設計した場合(c)。公庫より短い28年で完済できるようになり、利息総額は797万円。返済期間が短縮された分、さらに効果的です。

妻 bでは公庫ローンより約300万円も負担を軽減できる・・・ということですか?

【諸費用含めて計算を】

FP その点は要注意です。借り換えの時には保証料や事務手数料、印紙代、登記費用などを改めて払わなければならず、合計で50万円前後かかります。これを考慮すると借り換えた前後の金利差が一定以上ないと負担軽減の効果は消えてしまいます。

ローン残高か既にかなり減っていれば、1%以上の金利差が必要かもしれません。しかし2千万円、20年間ほど残っていれば、0.2%程度の金利差でも有効なケースはあります。保証料を徴収せず、20万円前後の安い費用で借り換えられる金融機関もある為です。

変動金利や期間の短い固定金利選択型などで借りている人も借り換えは検討に値します。将来、金利が急上昇するリスクを抑えたいなら、より長い期間の固定金利タイプに借り換えればいいのです。

夫 なるほど。

【時期早いほど効果大】

FP 借り換えの次に考えたいのが「繰り上げ返済」です。月々の返済とは別に、手元資金を使ってまとまった額を返すことです。全額が元金の返済に充てられる仕組みで、元金が減るとそれに伴う利息も支払い不要となりそう返済額を大きく軽減できます。貯蓄を取り崩してもその後の生活設計に支障がない範囲内で実行するのが基本です。

繰り上げ返済には二種類あります。。毎月の返済額は変えずに残りの返済期間を縮める「期間短縮型」と、その反対に残りの返済期間は変えずに毎月返済額を減らす「返済額軽減型」です。どちらを選べば利息軽減の効果は大きいでしょうか?

夫 難しいですね。僕には想像もできません。

妻 そうね。私にも分からないわ。

FP 図Cでは当初2千万円を借り、その後100万円を繰り上げ返済した場合、利息をどれだけ軽減できるか試算しました。例えば返済開始から一年後に実行すると、利息は返済額軽減型で70万円減らせます。これだけでも大きいですが、機関短縮方にすれば223万円と、より大きな効果があります。

ただ、無理に繰り上げ返済して期間を短縮しすぎると将来、借り換えがしにくくなる面には要注意です。多くの金融機関は、借り換え後の返済期間を元のローンの残り期間の範囲に制限しています。短期に払い終えるには、長期で借りるより毎月返済額は多めに必要になります。その結果、年収に占める年間返済額の比率(返済負担率)が、審査基準を超え、断られる例があるといいます。

因みに、返済開始から10年後に実行した時の利息の軽減額は、期間短縮型で155万円、返済額軽減型で57万円。繰り上げ返済は早めにする方がより効果的です。複数のローンを抱えている場合は、どこのローンを優先的に返した方が有利か、金融広報中央委員会のサイトなどを利用して試算してみてください。

(http://www.saveinfo.or.jp/saveinfo_ssl/shikin/kinri_s_menu.htm)

妻 繰り上げ返済には費用はかからないの?

FP 通常は手数料がかかります。大手銀行の固定金利選択型では、1回あたり4千-5万円ほど。繰り上げ返済額が100万円以上だと、100万円未満の時より1万円以上跳ね上がることが多いので、余裕資金が100万円あっても返済額は99万円に抑えれば手数料を節約できます。ただ住宅公庫の場合は最低100万円が必要で、手数料は期間短縮型で3150円です。

【金言3か条】

・ 高金利時代のローン、早期借り換えを

・ 返済期間短縮型が利息軽減効果は大

・ 無理や期間短縮には注意

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